ATセミナー 2010 | セミナー | 名古屋大学 宇宙論研究室(C研)

ATセミナー 2010

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4月のセミナー

発表者
M1

日程/場所
4月15日(木)13:30-@B402

題名
卒論発表

概要
コンプトン散乱の散乱断面積関連初期密度ゆらぎ関連、ダークエネルギー関連

発表者
松原 隆彦

日程/場所
4月22日(木)13:30-@B402

題名
CMB非ガウス性の幾何学的解析

概要
精密宇宙論の時代になり、初期宇宙モデルやストリング理論などの検証を観測的宇宙論によって行う可能性が見えてきた。特に最近では原始非ガウス性を用いてこれを行う可能性がさかんに調べられている。非ガウス性の検出のためには高次相関を求めることが一般的だが、次数が増えるとその直接的な解析はかなり複雑化する。
我々はCMBゆらぎから直接高次相関を求める代わりに、ゆらぎの幾何学的パターンの統計的性質を用いて、もっとシンプルに扱う方法を開発している。ここで解析的に導かれた公式が極めて有用であり、それによると、3点相関を超える情報も比較的簡単に得られることが判明した。

5月のセミナー

発表者
横山 修一郎

日程/場所
5月6日(木)13:30-@B402

題名
Review of magnetic fields from inflation

概要
宇宙において磁場は様々な天体に付随する形で存在している。大きなスケールでは、銀河銀河団スケールの磁場の存在も観測的に議論されている。
このような大スケールの磁場の種となる初期磁場が初期密度揺らぎのようにインフレーション中に量子揺らぎから生成される可能性については様々な議論がなされてきた。通常の共形不変なMaxwell理論だと初期磁場は生成されず共形不変性を破るモデルが必要となるのは知られていたが、昨年くらいからたとえ共形不変性を破っても、電磁場のエネルギーがインフレーション中に支配的になってしまうという問題について議論がされている。
本発表では、そのあたりの研究についてのreviewを行い、多くの方と今後のこのあたりの研究の方向性みたいなものを議論できるとありがたい。

発表者
新田 大輔

日程/場所
5月13日(木)13:30-@B402

題名
宇宙論的2次摂動によるCMB バイスペクトル

概要
CMBの非ガウス性をみることは、インフレーションのモデルを検証する上でも重要な方法である。CMBのバイスペクトルはその非ガウス性のモデル依存をみるのに非常に強力な量と考えられている。
しかしながらCMBでみる非ガウス性には、インフレーション起源以外にも、光子が重力やバリオンなどと相互作用することで生じる非ガウス性など様々な要因があるため、初期起源の非ガウス性を抜き出すにはこれら2次的に生じる非ガウス性がどれだけあるのかを知らなければならない。
そこで本研究では、光子が従うボルツマン方程式を2次まで考慮し、そこからバイスペクトルを計算した。そのフィッシャーマトリックスを計算した結果、初期起源のバイスペクトルの観測には影響しないレベルであることがわかった。

発表者
竹内 努

日程/場所
5月27日(木)13:30-@B402

題名
Copula: statistical tool to explore dependence beyond correlation

概要
It is straightforward to calculate a marginal probability distribution function (PDF) from a certain multivariate PDF. However, the inverse is not trivial: when we have the whole set of marginals, can we reconstruct the original multivariate PDF?
The answer is partially true. The statistical tool for this problem is the copula. I will present the definition, derivation, and construction of copulas in this seminar.
Then, I present its application to the bivariate luminosity function of galaxies as a straightforward example. I will also discuss other possible applications.

6月のセミナー

発表者
市來 淨與

日程/場所
6月3日(木)13:30-@B402

題名
宇宙論的球対称重力崩壊におけるニュートリノ質量の効果

概要
ニュートリノには質量があることが分かっているが、その大きさは分かっておらず物理学に残っている問題の一つである。その大きさを決める手段として、銀河分布のクラスタリングやweak lensingなどの宇宙の大規模構造の観測が注目されているが、現在得られている制限をさらに厳しくするためには、重力の非線形効果が無視できない小スケールの情報が重要になると考えられている。したがって、宇宙論的な観測からニュートリノ質量を正確に決定するために、ニュートリノが非線形重力進化へ及ぼす影響を取り込んだ宇宙理論モデルを構築する必要がある。
そこで、本セミナーでは、簡単な非線形重力進化を記述するモデルである球対称崩壊モデルに、質量を持ったニュートリノを取り込む試みについて紹介する。

発表者
高橋 慶太郎

日程/場所
6月17日(木)13:30-@B402

題名
ガンマ線バーストで探るダークエネルギー

概要
近年Ia型超新星や宇宙背景放射などの観測によってダークエネルギーの存在が示唆されてきたがその性質や物理的起源は未だ明らかになっていない。物理的にはダークエネルギーは宇宙定数のように宇宙の歴史を通してずっと不変であるよりもダイナミカルに変化していると考える方が自然である。このような場合、Ia型超新星よりももっと早期の宇宙を観測できるガンマ線バーストがダークエネルギーの性質を効果的に探ることができると期待される。
今回のセミナーではダークエネルギーの諸問題と宇宙の距離梯子といった基本的なことから最近注目されつつあるガンマ線バースト宇宙論、そして将来の展望について発表する。

発表者
須佐 元

日程/場所
6月24日(木)13:30-@B402

題名
初代星周りでの輻射による種磁場の生成

概要
宇宙最初期の星形成の問題は現在の宇宙論における中心的課題のうちのひとつである。これまでの研究ではガスやDMの自己重力と放射冷却の問題として取り扱われてきた。しかし最近になって磁場の影響がどの程度あるのかが議論されるようになっている。
このセミナーでは、宇宙初期の第一世代、第二世代の星形成の初期条件として、どの程度の磁場があるかを議論する。特に初代星の輻射が作る電離構造によって生成される種磁場の強度を詳細な計算によって見積もったのでその結果について報告する。

7月のセミナー

8月のセミナー

9月のセミナー

10月のセミナー

発表者
Cyril Pitrou

日程/場所
10月7日(木)13:30-@B402

題名
The non-linear evolution of the cosmic microwave background

概要
Non-Gaussian effects in the cosmic microwave background (CMB) can arise either from the primordial phase of the universe or from the subsequent non-linear evolution. I will focus on the latter point and review the perturbation theory beyond linear order. I will detail how the kinetic theory can be used in cosmology to derive the evolution of perturbations for polarized radiation. Finally I will present the numerical results with an analytical insight of the evolutionary signal and dicuss the contamination induced in the measurments of non-Gaussianity in the CMB.

発表者
白石 希典

日程/場所
10月14日(木)13:30-@B402

題名
CMB Bispectrum of Vector Modes Induced from Primordial Magnetic Fields

概要
Magnetic fields are observed at the micro-gauss level in galaxies and clusters. Production of magnetic fields within a formed galaxy is extremely difficult, and the consensus is that they are amplified from pre-galactic seed fields. One interesting possibility is that these seed fields were primordial in origin, formed in very early universe.
A primordial stochastic magnetic field (PMF) can become the source of the temperature and polarization fluctuations in the Cosmic Microwave Background (CMB), hence, the amplitude of PMF has been constrained with their power spectra (2-point correlation function). However, in the context of the current precise observation of the universe, the information of their bispectra (3-point correlation function) begins to be used in recent studies. Then, only the effect of scalar-mode perturbation has been considered, however, for the sake of clearing up the possibility of the existence of PMF, one must include the contribution of vector (or tensor)-mode perturbation and update the bound of PMF.
Based on this motivation, we newly formulated the CMB bispectra in the vector-mode perturbation sourced from PMF. From the analysis of this, it became clear that vector mode makes more significant contribution than scalar one. Using our vector formulae, we found newer bound of the strength of PMF.
In this seminar, I present our formalism and some results.

発表者
正木 彰伍

日程/場所
10月21日(木)13:30-@B402

題名
Halo occupation distribution modeling for massive galaxy clustering

概要
We present a clustering analysis of 60,000 massive (stellar mass M* > 10^11Msun) galaxies out to z = 1 drawn from 55.2 deg^2 of the UKIRT Infrared Deep Sky Sur- vey (UKIDSS) and the Sloan Digital Sky Survey (SDSS) II Supernova Survey. Strong clustering is detected for all the subsamples of massive galaxies characterized by different stellar masses (M* = 10^(11.0-11.5)Msun, 10^(11.5-12.0)Msun) or rest-frame colors (blue: U - V < 1.0, red: U - V> 1.0). We find that more mature (more massive or redder) galaxies are more clustered, which implies that the more mature galaxies have started stellar-mass assembly earlier within the highly-biased region where the structure formation has also started earlier. By means of halo occupation distribution (HOD) models fitted to the observed angular correlation function, we infer the properties of the underlying host dark halos. We find that the estimated bias factors and host halo masses are systematically larger for galaxies with larger stellar masses, which is consistent with the general agreement that the capability of hosting massive galaxies depends strongly on halo mass. The estimated effective halo masses are 10^14Msun, which gives the stellar-mass to halo-mass ratios of 0.003. The observed evolution of bias factors indicates rapid evolution of spatial distributions of cold dark matter relative to those traced by the massive galaxies, while the transition of host halo masses might imply that the fractional mass growth rate of halos is less than those of stellar systems. The inferred halo masses and high fractions of central galaxies indicate that the massive galaxies in the current sample are possibly equivalent to central galaxies of galaxy clusters.

発表者
稲垣 貴弘

日程/場所
10月28日(木)13:30-@B402

題名
銀河衝突時に発生する重力波とmerger history

概要
銀河衝突は非常に大きな質量を伴う現象であるため、重力波の発生が予想される。我々はこの重力波を2つの銀河モデル(semi-analyticモデル、N体から得た宇宙論的ハロー)の2種類を用いて系統的に解析した。解析した結果、重力波は質量、集中度(massprofile)に非常に大きく依存することがわかった。
また、銀河衝突は稀な現象ではなく全宇宙を考慮すると頻繁に起こる現象であることから、背景重力波が生成されていると考えられる。これを考えるためにはmerger historyが不可欠である。そこでEPS(extend-pree-schechter)理論、モンテカルロ法を用いてmerger-historyを作ることを考える。

11月のセミナー

発表者
須藤 渉一

日程/場所
11月4日(木)13:30-@B402

題名
k-inflationの概要

概要
ビッグバンモデルに基づく宇宙の標準モデルには、平坦性問題、地平線問題、モノポール問題がある。これらの問題を一度に解決する手段として、インフレーション宇宙論が提唱された。これは宇宙の極初期に指数関数的急膨張を引き起こすドジッター期がある、というモデルである。このときに我々はスローロール・インフレーションを考えるが、これはポテンシャルが運動エナジーより支配的であるというものである。では逆に、運動エナジーが支配するモデルで同じタイプのインフレーションを起こせないだろうか。つまり、ドジッター宇宙になりえないだろうか。
今回は簡単な例を通して運動エナジーが引き起こすインフレーションの可能性について議論する。また、今後修士論文で取り組もうとしている話にも少し触れたい。

発表者
Brice Menard

日程/場所
11月10日(水)13:30-@B402

題名
Cosmic Dust

概要
Dust is a ubiquitous feature of the cosmos, playing an important role on a wide range of scales: dust grains are the building blocks of planet formation, they affect the thermodynamics of giant gas clouds and shape the spectra of galaxies by attenuating radiation at short wavelengths and re-emitting the energy in the infrared.
In this talk I will focus on the distribution of dust on cosmological scales. I will first present the recent detection of intergalactic dust obtained with the Sloan Digital Sky Survey. This detection is based on correlating the brightness of distant quasars with the density of millions of foreground galaxies. It allows us to quantify the amount of dust in galactic halos and the wavelength dependence of its extinction. I will then estimate the opacity of the Universe induced by this cosmic dust and address its impact on the estimation of cosmological parameters, in particular dark energy, using distant supernovae.

発表者
竹内 良貴

日程/場所
11月11日(木)13:30-@B402

題名
CMBと大規模構造との相関で探る非ガウス性

概要
インフレーション理論は、宇宙初期の密度ゆらぎはほぼガウス分布に従うことを予言している。しかし、今後の精密観測に伴いこのガウス分布からのずれである非ガウス性が注目されている。この非ガウス性はインフレーションのモデルに大きく影響するため、このずれの検証は初期宇宙のシナリオの解明へつながる。
近年この非ガウス性がバイアスを通して構造形成に与える影響が注目されている。しかし、この効果はバイアスを正確に見積もらなくてはならず、そのためにはダークマターの分布を精度良く観測し、バイアスの不定性をいかに克服するかが鍵となってくる。銀河分布などの宇宙の大規模構造は重力レンズの観測と強く相関していると考えられ、これらの観測を組み合わせることで精度良く非ガウス性がバイアスに与える効果を引き出すことが可能になると考えられる。
本発表では、今後のCMB 観測衛星PlanckとすばるHSCによる銀河サーベ計画に焦点をあて、フィッシャー解析による非ガウス性に対する制限を紹介する。

発表者
浅野 良輔

日程/場所
11月18日(木)13:30-@B402

題名
銀河のダスト形成史~grain growth vs. metallicity~

概要
銀河に存在するダスト(固体微粒子)は、銀河進化を反映する星形成率(SFR)や観測されるエネルギースペクトル分布(SED)など様々な物理量に強く影響を及ぼす。よって何がダストを形成し、どのくらいの量のダストが形成させるかを考えることは、銀河進化を理解する上で非常に重要である。
ダストというのは重元素で構成されているが、これら重元素は星の質量損失によって星間空間(ISM)に放出されている。またダストは形成されるだけでなく、超新星のshockによって破壊されたりもしている。またISM中でのダスト成長も考慮しなければならず、ダスト進化は様々な物理過程が複雑に絡んでいる。
そこで我々はダストの形成及び破壊源として漸近巨星分枝星、超新星爆発、ISM中での成長をそれらの金属量(metallicity)及び年齢を考慮して銀河のダスト進化モデルを構築した。その結果、ダスト進化はmetallicityに強い非線形性をもっていることが分かった。本発表では、今回構築したモデルとそこから得られた結果を紹介する。特にダスト成長とmetallicityの関係について議論したい。

12月のセミナー

1月のセミナー

発表者
佐藤 正典

日程/場所
1月13日(木)13:30-@B402

題名
Berkeley出張報告

概要
9月末からUC Berkeleyに2ヶ月半ほど滞在し、共同研究を行っていました。簡単にBerkeleyについて話してから、そちらでやっていた以下の研究について話します。
非線形重力進化は、パワースペクトルだけで記述できていた宇宙初期の情報を失わせてしまう。現在の宇宙の情報をできるだけ得ようとすると、より高次の相関の情報を入れなければならないが、これらは計算が非常に難しくなるため、困難である。そこで、我々は重力レンズ効果のシグナルである、convergenceの簡単な関数(modified logarithmic)のパワースペクトルを使うことによって宇宙の情報を復活させることを示した。この新しい場は、将来サーベイで得ることができる小スケールまで、その場のパワースペクトルで表されることが分かった。従って、非線形領域から多くの情報を得る重力レンズ効果については非常に有用であると考えられる。
本発表は、主にarXiv:1008.0349に基づいているが、現在進行中の研究についても少しふれようと思います。

発表者
青山 尚平

日程/場所
1月20日(木)13:30-@B402

題名
崩壊する暗黒物質[μ-CDM]について

概要
崩壊しない冷たい暗黒物質[CDM]の宇宙論的な影響を説明する$\Lambda $CDMモデルは観測可能な宇宙の大規模構造やバリオン分布などをうまく説明できるが、スモールスケールの成分の振幅を観測よりも大きく予言してしまうことが指摘されている。CDMが安定ではなく有限な寿命で崩壊すると仮定するとこの問題が緩和されることが提唱されている。しかし、有限な寿命でmassiveな粒子に崩壊する冷たい暗黒物質[$\mu$-CDM]の宇宙論的な影響、殊に宇宙の膨張則への影響はほとんど議論されていない。
今回、C.-P.Ma and E.Bertschinger,$ApJ$.455,7(1995)のボルツマン方程式を用いた議論を応用して崩壊前の親粒子$M$(質量$m_M$)が2個の娘粒子$D_1,D_2$(質量$m_{D1},0$)に崩壊する過程を考察した。特に崩壊する暗黒物質のエネルギー密度$(\rho_{M}+ \rho_{D1}+\rho_{D2})$の時間変化と宇宙の膨張則への影響を物質優勢宇宙モデルと$\Lambda $CDMモデルで各々計算し、エネルギー密度の時間変化の様子と宇宙年齢が$m_M$と$m_{D1}$の比で変化することがわかった。本発表では昨年9月から現在までに勉強してきたこと、研究・計算できたことをまとめ、将来計画[Future work]を説明しようと思う。

2月のセミナー

発表者
熊崎 亘平

日程/場所
2月4日(金)13:30-@B402

題名
Fine Feature in the Primordial power spectrum

概要
inflation理論によれば、量子的な密度ゆらぎの成長により今の大規模構造などが形成されると考えられている。特にslow-roll inflation理論から予想されるCMB温度ゆらぎは現在の観測と良い一致が見られる。しかしCMB温度ゆらぎのスペクトルを詳細に見てみると、slow-roll inflation理論では説明できない小さなanomalyも発見されている。多重極モーメント$l=20-40$でのanomalyについては、ゆらぎを生み出すスカラー場の質量が変わることによってprimodial power spectrumが振動するというモデルで説明しようとする試みがある。
そこで、近年発見された$l=100-120$でのanomalyについても同じメカニズムで説明できるのではないかと考え、検証する。

発表者
松原 隆彦

日程/場所
2月10日(木)13:30-@B402

題名
宇宙の大規模構造における摂動論とバイアス

概要
精密宇宙論においては、大スケールといえども非線形効果が無視できず、ゆらぎの非線形摂動論が再び興味を集めている。これまでの単純な摂動論では、質量密度ゆらぎの非線形性だけが扱われてきた。だが観測量の記述には、赤方偏移空間変形および銀河バイアスという非線形プロセスの理解が必要不可欠である。
今回は、実際の観測量を予言するため伝統的な摂動論を拡張して、バイアスと赤方偏移空間変形の非線形過程を扱う一般的な枠組みを考える。

3月のセミナー

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