数値計算手法の開発
非線形かつ極度に複雑な物理過程を含む天体現象を理論的に解明する上では,
解析的な理論手法と共に重要なのが数値計算の手法である.
特に,世界に先駆けて本質的な研究分野を開拓するには,その道具としての
数値計算手法を開発することが極めて有効である.
そのため,我々の研究室ではさまざまな物理過程についての数値解析手法を
開発している.
有限体積法
空間を多数の小部屋(cell)に区切って,隣り合うcell同士の
相互作用を計算することで時間発展を記述する方法である.
いわゆるメッシュ法のうち,現代的な保存形式の手法がこれであり,
厳密に質量や運動量,エネルギーを保存する計算法になる.
磁気流体力学の2次精度ゴドノフ法
MHDの各種のモードを近似的に2つのグループ
(圧縮性モードと非圧縮モード)に分解し,
それぞれのグループのモードについての非線形の式を
厳密に特性曲線法で解く手法を開発した.
佐野(大阪大学)・鈴木・井上(青山学院大学)・犬塚他.
輻射流体力学計算法
Variable Eddinton Factor法を用いて,
一切の拡散近似を用いないほぼ厳密な輻射流体コードを開発し,
原始星の形成過程などを解明した
(Masunaga, Miyama, & Inutsuka 1998,
Masunaga & Inutsuka 2000等).
また,2流束近似を用いて,水素分子を解離する紫外線ライン
の輻射輸送を含む輻射流体力学コードを用いて,
大質量星の周りの電離ガス領域の膨張過程を解析した
(Hosokawa & Inutsuka 2005, 2006等).
弱電離プラズマの2流体コードの開発
いわゆる区分厳密解法という方法を定式化し,
2流体の間の短い時間スケールでの緩和を記述しつつ,
高速に計算できる実用的な計算方法を開発した.
参考論文
Inoue & Inutsuka (2008) ApJ 687, 303
相対論的粘性流体計算法
Israel-Stuart式の散逸を含む相対論的流体計算法を開発した.
このような因果律を満たす散逸理論では,ガス粒子の衝突時間に
相当する時間で緩和する現象を含むため,
現実的な計算が困難であったが,
我々はInoue & Inutsuka (2008)の区分厳密解法のアイデアを
利用して安定・高速に計算できる手法を開発した.
高本(京都大学)・犬塚
参考論文
"A Fast Numerical Scheme for the Causal Relativistic Dissipative
Hydrodynamics"
Makoto Takamoto & Shu-ichiro Inutsuka (2011)
Journal of Computational Physics, Volume 230, pp.7002-7017
arXiv:1106.1732
クォーク・グルーオン・プラズマへの応用
名古屋大学・物理・H研・
野中准教授,
名古屋大学・KMI
・赤松特任助教らとの共同研究
"A new scheme of causal viscous hydrodynamics for relativistic heavy-ion collisions:
Riemann solver for quark-gluon plasma"
Yukinao Akamatsu, Shu-ichiro Inutsuka, Chiho Nonaka, Makoto Takamoto (2013)
Journal of Computational Physics, Vol.256, pp.34-54
(arXiv:1302.1665)
QGPに関する勉強会のページ
This page is under construction.