数値計算手法の開発

 非線形かつ極度に複雑な物理過程を含む天体現象を理論的に解明する上では, 解析的な理論手法と共に重要なのが数値計算の手法である. 特に,世界に先駆けて本質的な研究分野を開拓するには,その道具としての 数値計算手法を開発することが極めて有効である. そのため,我々の研究室ではさまざまな物理過程についての数値解析手法を 開発している.


粒子法

Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH)

ラグランジュ粒子を用いて流体力学を記述する手法. メッシュを用いるゴドノフ法の中心部分である リーマン問題解法ルーチンを採用して, 高精度・安定に衝撃波を記述するようにSPH法を定式化した. 通常の有限体積法(メッシュ法)とは対照的に, 熱エネルギーを更新するスキームでありながら, 質量,全運動量,全角運動量,全エネルギーはすべて 計算機丸め誤差の範囲で保存されるため, メッシュ法よりも超音速流の記述に優れている. 参考文献 Inutsuka 2002 JCP 179, p.238

 風洞実験のSPH法による2次元テスト計算. 左側からマッハ数2の流れが入り, 横軸の-0.5の場所から始まるくさび型台により斜め衝撃波が形成され, 上下の壁でそれが連続して反射される様子を高精度に記述している. 左の図はマッハ数分布を等高線で表している. 右の図は実際のSPH粒子の配置のスナップショットである.

磁気流体力学的SPH法

Godunov SPHを磁気流体力学に拡張した. 岩崎・犬塚
"Smoothed Particle Magntetohydrodynamics with Riemann Solver and Method of Characteristics"
Kazunari Iwasaki & Shu-ichiro Inutsuka (2011)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Vol. 418, pp.1668-1688
(arXiv1106.3389)

Godunov SPHを非理想磁気流体力学に拡張した. 塚本・岩崎・犬塚
"An explicit scheme for ohmic dissipation with smoothed particle magneto-hydrodynamics"
Yusuke Tsukamoto, Kazunari Iwasaki, Shu-ichiro Inutsuka (2013)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Vol. 434, pp.2593-2599
(arXiv:1305.4436)<


初等的教科書
シリーズ 現代の天文学 14 「シミュレーション天文学」
富阪 幸治・花輪 知幸・牧野 淳一郎 編 (第7章SPH法)
日本評論社 ISBNコード978-4-535-60734-7, 発刊日:2007.08, 判型:A5判, ページ数:336ページ



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