星の形成

 星形成過程の研究においては、 「どのようにして角運動量を捨てて星が形成されるか?」と 「形成される星はいつどのようにして磁束を失うか?」の 二つの問題を解明しなければならない。 これらの問題に我々は正面から取り組んでおり、 その二つの問題の解決は密接に結びついていることがわかってきた。
 下図はわずかに回転する高密度分子雲コアの中で重力崩壊が起こり, 星が生まれる過程を首尾一貫して記述する一つの非理想磁気流体力学的 数値シミュレーション結果のスナップショットである. まず、10AU程度の大きさの第一コアが形成され, その中で再度の動的収縮が始まり, 最終的には太陽半径程度の大きさの第2コア(原始星)が形成される. それぞれの天体の形成に伴い,両極(回転軸)方向に高速ジェット状ガスが流れ出し、角運動量を放出する.
 下図左側は分子雲コアの重力方向(第一収縮と呼ばれる)の後に中心に 第一コアと呼ばれる星の前駆体が形成されているところを表している. 下図右側はその第一コアの内部で水素分子の解離が引鉄となり, 第2収縮が起き,第2コアつまり原始星が 生まれるところに対応している. 第一コアができるとその両極方向に大きな開口をもつガスの流れが できており,双極分子流として観測されている現象に対応している. 原始星の表面からは同じく両極方向に細く絞られた高速のジェットが 放出されており,光学ジェットとして観測されるものに対応している. 双極分子流と光学ジェットの放出速度はそれぞれの駆動領域における 中心星重力場からの脱出速度程度の大きさになっている. これら双極のガス流は角運動量を外に運ぶ役割をしている. 第1コアの内部では電離度の低下のため, 磁力線がガスに凍り付かず,そとに漏れ出しており, 形成される原始星の磁束を減少させている. このように,星が形成されるときは, 第一コア形成の段階で大きく角運動量を失い, 第一コアの中で磁束を失うことが分かった. この計算では長さスケールで8桁以上のダイナミックレンジをカバーしており, 巨大電波干渉計(ALMA)などを用いた最先端の観測による 理論的予言の詳細な実証が待たれている。 犬塚・町田(九大)・松本(法政大)

 
    原始星形成過程の数値シミュレーション結果(町田・犬塚・松本2006-2011)  



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