初期宇宙 | 研究内容 | 名古屋大学 宇宙論研究室 (C研)

初期宇宙

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図1:エドウィン・ハッブル(左) 宇宙膨張のイメージ(右) [S.Arai]
図2:宇宙初期に起きたインフレーション(イメージ) [S.Arai]

宇宙に始まりはあったのでしょうか

1929年アメリカの天文学者ハッブルは遠方の銀河ほど速く遠ざかっていることを発見しました。この事実は宇宙が膨張していることで説明されます。ここで時間を巻き戻していくと、宇宙は有限の時間で一点に潰れるということがわかります。すなわち宇宙に始まりがあるということです。それでは宇宙はどのように始まったのでしょうか。現在物理学者たちは、宇宙の始まりにはインフレーションと呼ばれる急激な加速度的膨張が起きたと考えています。宇宙誕生後の間に、一瞬のうちに宇宙の大きさは数10桁も大きくなりました。インフレーション中には宇宙の量子揺らぎから、宇宙にある多様な構造の種となる初期密度揺らぎが生成されます。さらに、インフレーションが終わると、加速膨張を引き起こした莫大なエネルギーから大量の素粒子が生成され、宇宙が高温、高密度な火の玉となります。ビッグバンの始まりです。その後高温で高密度な状態から宇宙の膨張により宇宙全体の温度が下がっていき、水素やヘリウムなどの軽い原子核が作られます。これは宇宙が始まっておよそ3分後のことです。そして誕生からおよそ38万年後に、光が宇宙空間を自由に伝わるようになります。これを宇宙の晴れ上がりといい、この頃に放たれる光を宇宙マイクロ波背景放射(CMB)といいます。インフレーションから宇宙の晴れ上がりまでの宇宙は初期宇宙と呼ばれます。

ビッグバン理論は宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測によって確かめられています。さらにCMBの微細な温度揺らぎがあることから、初期密度揺らぎの存在も確かめられています。今後さらに精密な観測が可能となり、初期密度揺らぎの非ガウス性や偏光観測、原始重力波など、初期宇宙に関する詳細な情報が得られると期待されています。宇宙の始まりを求める研究は今まさに最盛期であるといえるでしょう。

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