重力波 | 研究内容 | 名古屋大学 宇宙論研究室 (C研)

重力波

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ブラックホール合体のイメージ図
ブラックホール合体に伴う重力波の強さの変化

2015年9月、米国と欧州のLIGO-Virgo(ライゴ-バーゴ)チームによって重力波が初めて観測されました。今や研究者や学生だけでなく、誰もがニュースなどで一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

重力波とは、その名の通り、重力の作用によって時空に起こると考えられている波です。これは重力に関する理論、アインシュタインの一般相対性理論から理論的に予言されていたものです。この理論によれば、まず質量を持つ物体が存在すると、その周囲の時空がその物体がない場合に比べて歪みます。さらに、この物体が動くと、この歪みが波として光速で伝わっていく現象が起こります。このとき起こる波を重力波と呼びます。

「時空の歪みができる」ということをもう少し具体的に言うと、これは「時間や空間の間隔に、時間ごと場所ごとで相対的な差ができる」ということを意味します。つまり、質量のある物体が存在すると、物体の長さや感じる時間の長さが時間や場所ごとに変わるのです。これは時空の歪みそのものである重力波が通過したときにも起こります。原理的にはこのような特徴を利用して重力波を観測します。もちろん、私たち自身やその身の回りにある様々な質量を持ったものも時空を歪めていますが、質量が小さいため、普段私たちがその効果を実感することはありません。重力波のもたらす変化もそのようにごくわずかなもので、実際太陽から地球までの距離中でも水素原子一つ分の歪みしか生みません。観測ではそのような小さな変化を敏感にとらえる必要があるため、高度な技術力が要請されます。それだけに冒頭で述べたLIGOの観測は、非常な驚きと喜びをもって迎えられたのです。

LIGOで発見された重力波は、二つのブラックホールの合体の際に生じたものでした。しかし、重力波は他にも、宇宙のあらゆるところから発生していると考えられています。例えば、大質量星がその最期に起こす超新星爆発や、中性子星の合体、果ては初期宇宙で起きたとされるインフレーションなども重力波の発生源となります。

このように、重力波を観測することで、光(電磁波)で見えない暗闇でも何が起きているかがわかるようになります。人類は長く光に頼って観測を進めてきましたが、光は進行途中で物体に吸収・散乱・反射されるなど、発生源以外の環境に大きく左右されてしまうのです。一方、重力波は物体に吸収も反射もされないため、直接発生源の情報を教えてくれます。宇宙には可視光以外の波長の光を含めても、まだ”暗闇”の部分が多くあります。日本でも、数多くの現象を、重力波を用いて明らかにしようと、重力波望遠鏡「KAGRA」が建設中です。重力波は、これまで誰も目にしたことのない領域を切り拓く重要な情報源として、今まさに世界中からの期待と注目を集めているのです。

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